河井の考える建築コンセプト

  • 環境共生
  • リノベーション
  • 木質化
  • 都市
  • 集まる
  • 医療/福祉
  • 住む
  • ワークスペース
  • 環境共生

    極端な比喩を使うなら、かつて人類にとって広大無辺のフロンティアであった地球は、現代では皆で肩を寄せあって暮らすような小さな星となりました。自分の家の裏にゴミを投げ捨てれば反対側から帰ってくる、そんな時代なのです。
    ですから今や望むと望まざるを問わず環境問題への対応は必須です。避けられないものであれば嫌々消極的に取り組むより、これを新しいライフスタイルを創りだすチャンスと捉えた方がはるかに生産的なのではないでしょうか。そもそも北風と太陽の寓話にもあるとおり、強制されて嫌々やることは結局効果も上がりにくいもの。
    私は美しく楽しく環境に良いそんなライフスタイルの受け皿である場所や空間を創りだすことを目標に設計に取り組んでいます。

  • リノベーション

    私はリノベーションが大好きです。それはいわば時間を超えたコラボレーション。先人の知恵をイイトコドリできるわけでこんな得なことはありません。モノとして考えても神ならぬ身の我々はは古いものを「創りだす」ことはできない訳で、かといって全て新しい物で同等の価値を創りだすのは容易なことではありません。そもそも開発が進み総量としての「床」が余っている現代では新築する場合でも従前に建っていた建物を壊して、ほぼ同じサイズの躯体を造ることが少なからずあります。こう見ても上手に(ここが重要なのですが)リノベーションすれば新築より高い費用対効果が得られると考えるのは至極論理的な結論です。

  • 木質化

    木は太陽エネルギーを使って空気中の二酸化炭素を木の幹や葉っぱといった固体の炭素化合物へと変えます。「木が成長する分二酸化炭素を吸収する」というのはそういう意味です。逆に言えば成長しきってこれ以上成長しない森の木は、伐って若木を植えないと二酸化炭素は吸収されないのです。また伐った木は燃やしてしまえば二酸化炭素に戻ってしまうので固体のまま置いておかなければなりません。これが「炭素固定」。日本の国土の約1/3は戦後に植えた人工林、戦後70年の今成熟しきっています。つまり山には伐らないといけない木が大量にあります。にも関わらず日本の木材自給率は3割程度。つまり伐らないといけない木を伐らず、外国から買っているのです。私は日本の木を使って気持ちの良い空間をつくることを考えて日々設計しています。

  • 都市

    「みやび」と「ひな」という対語があります。みやびは都会の洗練、ひなは田舎の素朴といったような意味です。どちらが良いというのではなくそれぞれ独自の価値観があります。その片方、都市には人が集まります。そして集まることによるメリットがあります。しかしメリットのある所にはマナーもあるもの。これは建物でも同じ。都市には都市の建築マナーがあるのです。ただ都市のマナーは時として複雑で面倒なもの。敬遠してしまいがちです。しかし上手に付き合えばこれほど豊かな生活をもたらしてくれるものも無いのです。私はこのような都市のマナーを丁寧に読みながら設計することで現代人の都市生活に本来の豊かさを実現するよう努めています。

  • 集まる

    都市では人が集まって生活しています。集まることの大きなメリットのひとつは「共有」すること。ただ数だけが多くても何も共有していなければメリットは無いのです。例えば美術館。一人で名画を購入することは出来ないけれどみんなで購入すれば沢山の人が「自分の」名画を持てる訳です。体育館だってコンサートホールだって同じです。集合住宅も住戸の数がただ集まっただけではもったいない。私は集合住宅を設計する時、住民の方々がここで何を共有するのかを常に考えながら設計を行っています。

  • 医療/福祉

    英語の「病院」(Hospital)と「おもてなし」(Hospitality)はラテン語の同じ語源を持つ言葉です。しかし現代日本の医療施設はおもてなしの施設と呼べる質をもっているでしょうか?福祉施設は利用者さんが自分の家にいるように落ち着ける場所になっているでしょうか?医療福祉施設の最大の利害関係者はユーザー即ち患者さんや施設の利用者さんです。しかしながら施設を計画するとき物事を決める場には、施設所有者/施設管理者しかおらず、患者さん利用者さんの声は施設の計画に反映されません。私は患者さん利用者さんの立場を代弁する役目を常に意識して医療福祉施設を設計しています。

  • 住む

    人それぞれの体形が違うように、人々の生き方、住まい方は千差万別。となるとその受け皿である住宅も色々な形をしているはず。ですが、実態はどこへ行ってもハウスメーカーの家が建っていない所は無いくらい多くの「既製品」住宅が建っています。別に「悪目立ち」する必要はありませんが自分の生活にぴったりあった家に住むことは(毎日のことですから)とても大切なことではないかと思います。それにあまり没個性な家ばかり並んだ町もあまり楽しそうではありませんよね。私は住む人の生活にぴったりの住宅をつくり、町の景色を豊かにすることを考えて住宅を設計しています。

  • ワークスペース

    オフィスビルは都市の中心的な要素。市街地は実質的にオフィスビルで出来ているのです。しかし一般的に建築家はオフィスビルをあまり手掛けません。また日本の産業構造はサービスといったソフトな物を扱う第三次産業へと急速に中心を移しているのですから、いわば「知的生産の工場」であるオフィスは、知的労働生産性を真剣に考えてつくられなければなりません。しかし今大多数のオフィスは高度成長期のオフィスと大差ないようなものではないでしょうか?そもそもどのようなオフィススペースが現代の知的労働環境としてふさわしいのかというモデルが未だ無いように思います。
    私はこのような「モデル」をつくる仕事こそ建築家の仕事であると考えています。内からも外からも本質的に建築家の関与が求められる分野それがオフィスです。私はオフィスビルを及びオフィス空間を重要なテーマと考えて取り組んでいます。