平安郷
暑熱地方の建築から閉塞する近代建築のブレイクスルーを探す試み。
- Region
- 沖縄県
- Program
- 福祉施設+宿泊施設
- Structure
- RC造地上2階
- SiteArea
- 1424.96m²
- BuiltArea
- 834.91m²
- FloorArea
- 1,244.12m²
- Completed
- 2006.3
- Publications
- 新建築2007.2、日経アーキテクチュア2008.6-23
- Awards
- 2008年第6回環境・設備デザイン賞優秀賞
Photo by Hiroyuki HIRAI
現在一般的なヒートポンプ(HP)を利用した空調設備が一般化する以前には、基本的に水の蒸散を用いるしか空気を冷却する方法が無かった。HP を利用するようになって以降、空間は(空調の計算を可能とするため)閉鎖した室とすることが必要となり、それ以前に生活の知恵として伝え保持してきた蒸散の利用や、動的な空気のコントロールと活用のマナーが失われた。当建物では民家(特に汎東南アジア建築ともいえる高床茅葺き民家)に見られる「生活の知恵」を(動的な気流解析等がある程度可能な)現在の技術環境の中で、再度見直す事で新しい建築のあり方を模索している。
例えばRC構造に直接吹き付けた芝土屋根に雨水を散布しておき(屋根材の保水力)、常時吹く海風による蒸散により躯体を冷却して機械空調の無い共用部を実現している。
また高さのある空間では開口部の高さを色々と違えることで重力換気を喚起したり、上下階の平面形状をずらして立体的な「抜け」を作ったりする事で、エネルギーの投入無く空気を動かし空気調和を図っている。他に熱的な挙動を穏やかにする為に木材を多く利用しているが、これは前述の立体的な抜けと同じ事を異なる次元で実現しているとも言え(様々な位相での多孔性)、建築における新たなプロトコルの存在を示唆している。 温熱環境への効果は実測されており(熊本県立大学辻原・細井研究室との共同研究)、大きな効果が確認されている。(日本建築学会技術報告集に掲載)