上京まちや2
塀と前庭のある「仕舞た屋(しもたや)」形式の町家改修。
- Region
- 京都府
- Program
- 専用住宅
- Structure
- 木造2階
- SiteArea
- 97.19m²
- BuiltArea
- 53.96m²
- FloorArea
- 84.77m²
- Completed
- 2016.10
Photo by Hiroyuki HIRAI
一般に京町家の間口巾は居室用の二間(けん)に通庭の半間強を足した二間半強(京間の一間は1.91m)ある場合が多い。居室側は押入があれば間口一間半となり、奥行き一間半で四畳半、奥行き二間で六畳の部屋がそれぞれ取れるし、押入がなければ間口二間で六畳、もしくは八畳が取れることになる。それ以上広い部屋もこれらの続き間によって可能なので間口が二間あれば自在に部屋の大きさを創りだせるのである。水平動線及び水廻り空間は通り庭側で完結するので、二間半強の間口はフレキシブルなプランニングを保証する重要な要素であることがわかる。逆にいえば間口が二間半強を割り込むとプランニングは急に難しくなる。恐らくこのような経験の永年にわたる集積が日本人が居室間口で二間、建物全体で二間半強を「広さ感」の過不足の基準点とすることを導いて来たようにも思われる。
上京の町家2は間口がトータルで二間しかなく、通り庭側の架構を玄関付近の4尺から途中で半間に切り替えるという半ば掟破りの工夫をして成立させており、改修前は1階では全ての場所で狭さを感じるといっても過言ではない状況であった。特にキッチンは通路と流し台の奥行きを足して半間という驚異的な狭さで、リビングスペースも巾一間半、そこにタンス等がおかれて有効に使える巾は半間強しか残らないような状況であった。そこで本計画ではキッチン/リビング間の壁を撤去、階段横の間口一間半を切る室では欄間部に鏡を設置する事で、巾方向を見える室内巾で二間、視覚上の建物全体巾を二間半強に感じるようにしている。またリビング床を下げる事で(下げた部分は耐湿性材量である煉瓦床)天井高を稼ぐと同時に、キッチン床をもう一段下げる事でキッチンカウンターをそのままダイニングテーブルの一部として使えるようにしてスペースを有効につかっている。これはまた同時にキッチン天井上部(キッチン天井は元々の鴨居レベル)には新しい天井フトコロが出来、貴重な設備スペースとして使えるという利点も産んでいる。