京都大学思修館廣志房
京都大学における全寮制の博士プログラムに利用される合宿型研修施設。
- Region
- 京都府
- Program
- 寄宿舎
- Structure
- 木造地上3階
- SiteArea
- 868.10m²
- BuiltArea
- 384.51m²
- FloorArea
- 1,033.91m²
- Completed
- 2013.2
- Publications
- JIA MAGAZINE
Photo by Hiroyuki HIRAI
京都大学構内初の準耐火木造建築物。述床面積1000㎡を超える規模の建物であるが、構造的には極力特殊な方法を避けて、基本的には柱梁に構造用合板を用いた耐力壁を組み合わせたいわゆる在来工法の延長線上にある構法でつくられている。もちろん足元の引き抜き力が非常に大きくなるといった在来工法そのままでは対応できない問題もあり、そう言った点はラグスクリューボルト等先端的な技術を用いて解決している。
日本における(国産)木材利用の促進を考える時、この規模の建物が在来工法の延長線上で出来ることの意味は非常に大きい。何故なら日本には在来工法の担い手が大量におり、彼らはそのまま(都市のなかで大きなボリュームを締める)この規模の木造建築の担い手になることができるからである。これに比して先端的な技術・構法を用いる場合、技術そのものが特許等の囲い込みの対象であることも多く、又新しい技術であることから担い手である技術者を養成しなければならないので大きなボリュームを産み出すまでにいたるには多大な時間と費用がかかる。
また一般に木造の耐火建築物や準耐火建築物は法規上の制約から、S造やRC造の耐火建築物、準耐火建築物に比べて外壁に木材を張る事が難しく、見た目上、木造の建物が最も木造に見えないというパラドックスがある。当建物では工夫をして外壁に木材を張る事で木材利用を発信すると同時に、構内でも官舎等が並び住居的な雰囲気を持つ敷地周辺の界隈性を保つ事に貢献している。外周廻りの建具も(防火戸を含めて)全て木製建具としている。内装材にも桧や杉の無垢材を多く利用しているが、それらの素材が持つ健康上の効果も一部研究の対象となっている。
平面的には中央に光庭を配し、その廻りを寮室が取り囲む回廊型。寮室の更に外側にはバルコニーが取り巻き雨風から外壁を護っている。またこのバルコニー外端には外部ブラインドが付いているが、このブラインドによって直達日射(ダイレクトゲイン)の部屋への侵入を可変的にコントロールする事が可能であり、夏は熱をカットして冷房負荷を削減するのと同時に冬は熱を取り入れて暖房負荷を削減するという事が可能となっている。中央の光庭は各室への通風採光を確保するという機能をもつと同時に、施設全体の一体感を演出する道具でもある。光庭中央の水盤は大屋根の雨水を集めており、外界の変化(たとえば黄砂など)を可視化する事で環境学習の一助となる事を期待している。